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最高裁判所第三小法廷 昭和45年(行ツ)39号 判決

奈良市東向中町九番地

上告人

北邨進一

右訴訟代理人弁護士

荒木宏

奈良市登大路町八一番地

被上告人

奈良税務署長

佐竹三千雄

右当事者間の大阪高等裁判所昭和四四年(行コ)第二九号課税処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四四年一二月一八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人荒木宏の上告理由について。

原審確定の事実関係のもとにおいては、所論の点に関する原審の判断は正当で、原判決(その引用する第一審判決を含む。)に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 坂本吉勝 裁判官 田中二郎 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一)

(昭和四五年(行ツ)第三九号 上告人 北邨進一)

上告代理人荒木宏の上告理由

一、原判決には判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背がある。

原判決は第一審判決を全面的に容認しているが、第一審判決は訴外北邨ハル子が建築した地上店舗に就き、加工の法理を認めず、右店舗も上告人の所有になると判示している。

然し、

(1) 地上に建物基礎と柱だけが建つている状態で引き続いて建物を完成させれば、経験則上それは建物の新築と呼ぶべきであり、右地上建物を建築完成させたのは、右訴外人であるから、その所有権は右訴外人に帰属するものと云うべきである。

従つて、原告の土地所有権は敷地所有権にすぎず、その意味で更地所有権として評価した第一審判決並びに原判決は明らかな経験則違反があり、取消されるべきである。

(2) また原判決は第一審判決を容認して、不動産については加工の規定を類推しないものとし、土地所有者に対抗しうる権限の取得を伴わない場合は加工の規定の類推を認める実質的意味がないとしているが、本件の場合、右訴外人は上告人の母親で土地の使用貸借権を確保しうることは明らかであり、その意味からも社会経済的に加工の類推をするべき場合に当り、原判決は明らかに法令の解釈を誤つたものとして取消されるべきである。

(3) また右訴外人は添附別紙のとおり上告人に対し別紙鑑定書のとおりの店舗評価額を基準として償金請求権を有しており、上告人の課税標準は右償金請求権価格を控除されるべきであり、これを正当に控除することを認めなかつた原判決は旧所得税法第九条一項八号の解釈を誤つたものとして取消されるべきである。

二、以上のとおり原判決には判決に影響を及ぼすこと明らかな法令違背があるので、その取消を求める次第である。

以上

(添付書類省略)

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